子どもに寄り添う - 少年事件・学校事故への取り組み(野口善國)
「ちょっといい話」〜野口善國のつぶやき
昨年12月、ちょっと嬉しいことがありました。
10年程前まで私とつきあいがあった元少年(A君としましょう)が、久しぶりに電話をかけてきて、「久しぶりに先生の顔を見てあいさつしたいのですが」とのことでした。
やってきたA君はもう27~8歳になっていましたが、私に会うなり、「先生これっ」と言って1枚の紙を見せてくれました。
何とそれは司法書士試験合格証書でした。A君は「先生のおかげです」と涙ぐんでお礼を言ってくれましたが、嬉しくてお礼を言いたいのはむしろ私の方でした。
昔は親に暴力をふるったり、学校の先生の車をぶち壊したり、なかなかの暴れん坊でしたが、すっかり立派な好青年になってくれていました。
A君によればもう一つおまけの話がありました。
一緒に勉強していたX君は、A君より先に合格しましたが、A君にこう言ったそうです。
「おれは少年院で教育を受けたから、そのため早く合格した。お前は教育が十分でなかったから遅れたんだな」。
それから1週間後、私の留守中に突然、1人の中年の男性(Bさんとしましょう)が訪ねてきました。Bさんは「先生のおかげでやっとここまで来ました」と言い、一枚の名刺を置いて帰っていきました。20年以上前に、重大な事件を起こし、私が付添人となった少年がBさんでした。
少年院には行かなかったのですが、Bさんは高校卒業後10年間賠償金を支払い続けました。Bさんの名刺には、某大手企業の支店長の肩書きがありました。
100%とまでは言えないが、少年の頃、とんでもない非行少年と思われている人でも、皆立派な大人になっていくのです。それも、親が子どもに愛情を示してくれる場合は特に立ち直りが早いのです。
少年事件における付添人の重要な役割のひとつは、親の愛情を子どもに伝えてあげること、感じさせてあげることです。そうすれば、必ず子どもは立ち直るのです。