子どもに寄り添う - 少年事件・学校事故への取り組み(野口善國)
【1】少年事件〜早いうちに弁護士に相談を
2 早いうちに弁護士に相談を
逮捕されるとあとが早い
お子さんが逮捕されると、2日以内くらいで勾留がなされることが多く、その後、最長で20日以内に少年鑑別所に送致されます。
その後は、4週間以内で少年審判が下されるのが普通です。
殺人など、重大事案の時は8週間以内に延長されることがあります。よく何年もかかる裁判が報道されるので、裁判は時間がかかるものと思ってのんびりしていると、あっという間に審判が済んでしまうことになります。
多くの場合、少年事件の審判は1回きりで、その場で、少年院送致、保護観察などの処分が言い渡されます。
ですから、ご自分でせっかくふさわしい弁護士を選ぶつもりでいたのに、その選択が遅すぎては、弁護士もほとんど準備ができずに審判を迎えることになってしまいます。ご自分で弁護士を選ぶ場合はなるべく早めに手配しましょう。
初めが肝心 - 自白調書の恐さ
日本の裁判所は捜査段階で作られた供述調書(取調官に話した内容を取調官が書面にまとめ、話した人が間違いないと署名、押印したもの)をとても重要視しています。
あとから、強制的に言わされたとか、思い違いをしていたとか裁判所の法廷で訴えても調書に書かれたことが真実とされることが多いのです。
ところが、少年の場合は、判断力が未熟で、抵抗する力が弱いので、誘導や強迫によって虚偽の内容の供述調書が作成される危険があります。そのような時に、取調官はしばしば「あとで裁判官にここはこういうふうに違っています」と話せば大丈夫などと言います。
しかし、いったん調書が出来上がると、裁判の時に少年がいくら本当のことを言っても信じてもらえないことが多いのです。
弁護人を頼む権利
刑事事件の被疑者や被告人には弁護人を選任する権利が憲法で保障されています。この権利は一般の人々が考えているよりずっと重要な権利です。
この権利のために、多くの無実の人が救われ、或いは多くの人々が不当な処罰を免れているのです。
例えば、私の依頼者の女性は戦争中に父を失い、母も病気になってしまったため、幼い弟妹の世話をせねばならず、字がよく読めませんでした。彼女は思いやりの深い人で自分の従業員に頼まれてお金を貸してあげました。
すると、その従業員はそのお金で無届けの高利貸をしてしまいました。彼女はその貸主であるとして連日警察の取調を受けました。
弁護人となった私は、私が調書を見て、大丈夫と言うまでは調書にサインをしないように助言しました。ある日私が警察署で彼女に会ったところ、彼女は「私の言うとおり調書にしてくれてるはずなのでサインをしたいのです」と言いました。
ところが私がその調書を見たところ、彼女が自分の罪を認める内容となっていました。私はあわてて彼女のサインを止めさせました。結局、彼女は起訴を免れたのです。もし彼女が弁護人に会えなければ、どうなっていたかは明らかです。
ですから、これまで警察は弁護人と被疑者の面会を様々な手段で妨害しようとしてきました。米国では弁護人のいないところで、被疑者が自白してもそれは無効だと考えられていますが、日本ではなかなかそのような考えは定着しません。
しかし、日弁連や研究者、報道機関などの努力により、「取調の可視化」(取調で調書が作成される時の状況をビデオに録画すること)が始まっているのは喜ぶべきことです。
ところが、少年事件については弁護人の必要性があまり一般には理解されていないのが残念です。
お子さんが無実の罪で処罰されないよう、不当に重い処分を受けないようにするためには、まず弁護士の助力を得るようにしましょう。